コメント/レビュー

瀬戸内寂聴(作家、尼僧)

東京の道端で、金子文子がいきなり朴烈に求愛する場面で開幕するこの映画は、
二人が大逆罪で終身刑になるまで、息もつかさせない程の緊張感で、観客の心を捕えて放さない。
文子役のチェ・ヒソの情熱的な演技と全身で放つ肉感的魅力に圧倒される。
二人を「余白の春」という小説で書いている私には、格別な感動だった。

ブレイディみかこ(ライター)

金子文子は自分の足で立ち、
自分の頭で思考し、愛し、抗い、
自分自身を生きた。百年前の日本に、こんなクールな
若い女性がいたことを、
日本の人々こそ知るべきだ。

中島京子(小説家)

死刑になろうっていうのに、
なんて元気のいい二人なんだろう!
文子と朴烈の愛と革命の物語は、
もやっと生きている現代のわたしたちを、
覚醒させる刺激に満ちている。

栗原康(アナキズム研究)

朴烈。職業、不逞鮮人。天皇は製糞器である。
この地球上のあらゆる権威に、
テメエの不逞をぶちかませ。
働かずにどんどん食いたおす。
こいつはフテイ野郎だァ!

森元斎(哲学・思想史研究)

犬ころの存在はかき消されたとしても、
そして一切の現象は現象として滅しても、
永遠の実在の中に存続する――
そう、金子文子と朴烈は今もなお、
私たちの中で生き続けているのだ!

西森路代(ライター)

アナキズムで結びついた金子文子と朴烈の
誇りと絆はいつの時代に見ても本物であると思えたし、
この現代に見るからこそ性愛も思想も含めた
理想的な同志だと思えた。生きた証を
二人が残してくれたことに感謝したい。

暉峻創三(映画評論家)

関東大震災時期の日本を舞台にしているが、
誰もが、いま現在の日本も大して変わってないことを
感じ取るだろう。そしてフェリーニの『道』のジェルソミーナを
参考にしたというチェ・ヒソの演技の、圧巻の素晴らしさ!

斎藤真理子(韓国語翻訳者)

この金子文子は
日本人には決して描けなかった。

鈴木邦男(評論家・元一水会顧問)

大正時代の方が思想弾圧は厳しいのに、
朴烈と金子文子はのびやかに闘い恋愛をしている。
法廷でのあの自由な態度。
今の時代の方がよっぽど窮屈に感じます。
すっかり二人に感情移入して、
私の民族派の血が揺さぶられました。

鈴木みのり(ライター)

国家にもパク・ヨルにも従属しない。
国や制度や性別といった規範の向こうで、
同志として他者と繋がろうとし、言葉を紡ぐーー
主体性をもった金子文子は、本作のもうひとりの主人公です。

足立正生(映画監督)

ああ、朴烈と金子文子の、若い血潮に満ちた道行が何と美しいことよ。
まさに、『赤き唇褪せぬ間に、恋せよ乙女』だ。
<天皇制を爆砕せよ!悪の根源を撃て!>
そう、一組の若い男女が、直線の純愛を生き抜こうとして、
革命に向かって走り抜けた。
ここには、草食派だろうが肉食派だろうが、
閉塞社会の苦境を突き抜けようとするなら、
現代の私たちが否応なく引き継ぎ、
紡ぐべき愛の神話が語られている。

木村朗子(津田塾大学教授)

金子文子があまりにチャーミングだ。
かろやかでまっすぐに首謀者然としているのがいい。
世界のあらゆる場所で起こった虐殺の歴史は
くり返し振り返り、反省し、後悔し続けなければならない。
たとえ都知事が追悼文から抹消したとしても、
関東大震災時の朝鮮人大虐殺の史実は葬り去ることができない。

岩井志麻子(作家)

私は犬だといえるほど気高く誇り高い人達にとって、
地を這いながら抵抗することは屈辱ではなく
命を燃やし未来を輝かせることだった。

金香清(キム・ヒャンチョン)(ライター、翻訳家)

権力のシナリオにあえて乗ることで、
大いなる復讐を果たそうとした女と男の物語。
韓国映画が描いた日本女性・金子文子の存在感に圧倒される。

ハン・トンヒョン(日本映画大学教員/社会学)

金子文子役のチェ・ヒソ、チェ・ヒソ演じる金子文子がとんでもなく魅力的!
「消えろこのやろう!」「静かにしろ!」――
政治に口を出すなとか
サヨクとか反日とかうるさい今ここに生きる、とくに
すべての若い女性たちに文子の啖呵を届けたい。
そして、天皇の代替わりのまさにこの時期に
この映画が日本で公開されること、
チェ・ヒソを通じて金子文子を発見、
再発見することになる日本の観客を祝福したい。

大日本帝国政府の滑稽な姿に韓国現代史上の歴代政権をも
重ねているようにも取れる監督の目線は、
過去ではなく現在、そして民族の対立構造を超えたところにある。
誇り高く気高い文子を、チャーミングで魅力的な文子として再構築した
チェ・ヒソの存在感と説得力が、その何よりの証明だ。

福島泰樹(歌人)

テロリストの烙印を押す前に問え大逆事件、鮮人の意味
さわやかな風吹く午後を駆けてゆく朴烈なにもしていないよう
福島泰樹歌集「うたで描くエポック 大正行進曲」から

PANTA(ミュージシャン)

素晴らしい凄まじいとてつもない映画と出会った。
まるで現場に居合わせてねじ曲げられた歴史に
拳を振るわせるように天皇制から連なるすべての差別、
捏造されていく報道に鋭く食い込んでいく
制作陣の思いはときに清々しくもある、
キャストの素晴らしさなど語るより
大正から昭和にかけた日本の真実に
目を見開いてもらいたいものだ

西村賢太(小説家)

それぞれの思想と
それぞれの立場により、
どのような観かたをしても
勝手であるに違いない。
ここに描かれた“個”における自由と、
他者への愛の崇高さを
胸に刻みつけてさえおけば――。

森まゆみ(作家、『海はあなたの道』著者)

なんという適役だろう。
イ・ジェフンとチェ・ヒソは大正末期の
朴烈と金子文子を鮮烈に演じきった。
植民地朝鮮の怒りと悲しみ、
関東大震災後に虐殺された朝鮮の人々、
二つ目の大逆事件が捏造されていく過程、
私たち日本人が目を背けてはならない歴史が
ここに示されている。

北原みのり(作家・ラブピースクラブ代表)

闘いには希望が必要なのだと思う。
金子文子と朴烈がみた希望を、
私もみたいと思う。信じたいと思う。
今の時代に二人に出会えて、よかった。

寺脇研(映画評論家/プロデューサー)

あんな時代に、日本に金子文子のような
真の国際人がいたことを誇りに感じる。
100年近く後、「日本スゴい」「日本人スゴい」と騒ぎ、
隣国への批判が横行する今の状態こそ恥ずかしい。

馬奈木厳太郎(自由法曹団 弁護士)

朝鮮人最初の大逆事件。主人公の二人にもだが、
ぜひ弁護人にも注目してほしい。
国民が主権者ではなく、基本的人権も保障されて
いない時代に、朝鮮人も日本人も関係なく冤罪と
たたかい、正義を訴えた人がいたことを。

2019年2月16日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開